
これからの寒い季節や、作り置きにもぴったりな煮物料理。でも、いざ作るとなると苦手意識が湧き上がってくる…という人も少なくないはず。今回は、初心者向けの料理教室を開催されている料理家・宮崎知花さんに、様々な煮物料理に応用が効く基本レシピを教えていただきました。

▲ 料理家の宮崎知花さんは2児の母。ご自宅で開催されている料理教室では、忙しいお母さんたちの味方「フライパンひとつ」シリーズや、「子どもと一緒にパン作り」など、ご自身の経験から生み出された楽しいレシピを多数ご紹介されています。
味しみ煮物のポイント
1. 大根の下茹でをする
大根をおいしく仕上げるためには下茹でが最も重要。加熱することで大根内部の細胞壁がゆるみ、出汁が内部まで浸透しやすくなります。また、加熱することで大根特有の辛味やえぐみを取り除き、甘みを引き出します。
2. 手羽先は焼いて旨みを引き出す
手羽先は皮目が下になるように並べて中火にかけ、香ばしい焼き色をつけておきます。ごま油で焼くことで、出汁を使わなくても豊かな風味が加わります。
3. おいしい煮物の黄金比(5:1:1:1)の調味料で、5分煮込む
水、しょうゆ、酒、みりん、大根を加えて沸騰したら、落とし蓋をして弱火で5分煮込み、さらに落とし蓋をはずして中火で5分煮込みます。
4. 鍋どめをして味を染み込ませる
煮上がったあともしばらく鍋の中に入れておき「鍋止め」をします。冷めるまでの時間に味が染み込んでより深みのある味わいに。

鶏肉の旨みでだしいらず
大根と手羽先のやわらか煮

手羽先と大根の下準備をしっかりしておけば、煮込み時間が約10分にもかかわらず、見た目にも芯までしっかり味が染み込んでいるのがわかるほどのしみしみの煮物が完成。お箸がス〜ッと通る、ほろほろの大根にも注目です。
\ 大根と手羽先のやわらか煮のポイント /
肉じゃがや筑前煮などの王道煮物も同様の調味料の比率で作れるので、いろいろ試してほしい鉄板レシピです。煮物は下処理をしっかりしておくことで 短時間でも味が芯まで馴染みますよ。

大根と手羽先のやわらか煮の材料(4人分)
- 大根(真ん中の部分)…約15cm
- 手羽先…8本
- 水…150ml
- しょうゆ…30ml
- 酒…30ml
- みりん…30ml
- ごま油…小さじ1

大根の下ごしらえ
1. 面取りをする
大根は幅4cm弱の半月切りにした後に皮をむき、面取りをする

面取りとは?
切り口の角を包丁で浅く削いで丸くすることです。大根の角と角がぶつかったり、芯まで火が通らないうちに角から煮崩れてしまったりすることがあるので、それを防ぎながら見た目も美しく仕上げることができます。
■ 包丁の代わりにピーラーを使っても◎
包丁を使って一定の深さで削ぎ取ることが難しい場合は、ピーラーを使ってもOK。包丁の場合と同様に、半月切りにした大根の角にピーラーを当て、薄く削ぐように動かします。
■ 削ぎ落とした大根はサラダに
削ぎ落とした大根は、千切り大根のような状態になるので、サラダにしておいしくいただきましょう。
2. 隠し包丁を入れる
1.の大根をさらに半分に切り、片面に深さ1cm程度の隠し包丁を十字に入れる

隠し包丁とは?
味の染み込みや、食材に効率よく火が回るように包丁で切り込みを入れることです。盛り付ける際には、切り込みを入れた面を下にして隠すため「隠し包丁」といいます。また、食べやすくなる効果もあります。
3. 下茹でをする
フライパンに大根を入れ、具材がひたるくらいの水(分量外)を入れたら中火にかけて茹でる。竹串がスッと通るくらいまでやわらかくなったらザルにあげて水を切る

■ 水が少なくなってきたら足す
水分が蒸発して大根が水面から出てしまったら、途中で水を足しながら茹でます。
大根はどの部位を使うのがおすすめ?
部位によって味や食感などの特徴が違うので、使い分けることで、大根料理をより美味しく仕上げることができます。


- ① 1番甘い部分なので大根おろしやサラダなど、生食に最適
- ② 水分をたっぷり含んで辛味が少なく硬いので、煮物向き
- ③ 辛味が強く、繊維もしっかりしているのでお味噌汁の具や漬物にするのがおすすめ
手羽先の下ごしらえ
1. 手羽先の水気を拭き取る
手羽先をキッチンペーパーで挟み込むようにして水気を拭き取る

■ 臭みを取る効果が
買ってきたままの鶏肉の肉汁には、臭みが含まれています。事前にしっかり拭いておくことで、下味がなじみやすくなり、仕上がりの味に違いが出ます。
2. 骨の周りに切り込みを入れる
キッチンバサミを使い、骨の周りに切り込みを入れ、もう1度キッチンペーパーで水気を拭き取る

■ 切り込みを入れることで、うれしい2つの効果
切り込みを入れておくことで火の通りが良くなるだけではなく、食べやすくなる効果も。
大根と手羽先のやわらか煮の手順
調理時間:約20分
1. 手羽先を焼く
フライパンにごま油を入れ、手羽先を皮目が下になるように並べ、中火にかける。香ばしい焼き色がついたら裏返す。両面が焼けたら、余分な脂をキッチンペーパーで拭き取る

■ ごま油でコクをプラス
出汁を使わないので、ごま油が風味豊かな香りづけの役割を果たします。
2. 調味料を入れる
大根、水、しょうゆ、酒、みりんを加えて再沸騰させる。アクが出たら取り除く

■ 調味料を入れる順番は?
難しい手順は一切なし!調味料はどれから入れても構いません。
3. 5分煮込む
クッキングシートを落とし蓋代わりにして、弱火で5分ほど煮込む。途中1度だけ落とし蓋をはずし、大根と手羽先の上下をひっくり返す

■ クッキングシートがない場合は?
木製やステンレス製の落とし蓋はもちろん、アルミホイルなどで代用することもできますよ。
4. さらに5分煮込んで、鍋止めする
落とし蓋をはずし、途中で大根と手羽先をひっくり返しながら中火で5分ほど煮込んだら、火を止めて蓋をして10分置く

■ クッキングシートがない場合は?
煮上がったあともしばらく鍋の中に入れておくことを「鍋止め」といいます。冷めるまでの時間に味が染み込んで深みが出るので、より美味しくいただくことができますよ。
5. 完成
大根、手羽先ともに、隠し包丁を入れた面を下にして盛り付ける。お好みで、刻んだしょうが(分量外)をトッピングして完成

煮物上手になる基本の黄金比
SATETOでは、煮物の基本知識や和洋の煮物レシピをご紹介しています。どれも今すぐ実践できるコツが満載です。ぜひ参考にされて、煮物上手になってくださいね。
覚えておくのはこれひとつ!「煮物上手の黄金比」

煮物にあまり挑戦したことがないという方にぜひ覚えて欲しいのが、調味料の「黄金比」。基本の配合さえマスターしておけば、あとは自分好みに味を調整するだけなので、すごく気が楽になります。とっても簡単なので、日々の食卓に煮物を取り入れてみてくださいね。
おすすめ煮物レシピ
和食の定番「基本の肉じゃが」

しっかりと味が染みた肉じゃがは、簡単なようでとても奥が深い煮物料理。煮崩れせずにホクホクのじゃがいもに仕上げるには、面取りやアク抜きなど下準備をしっかりと行います。調味料を入れる順番や、ふりしょうゆ、鍋止めなど、実はコツがたくさん!基本の肉じゃがレシピをぜひマスターしましょう。
肉味噌でいただく「基本のふろふき大根」

大根の下茹ではせずに、昆布と生米を入れた鍋でただただ煮込むだけ。じっくり煮込んだら、じゅわっととろけるふろふき大根のできあがりです。とろみたっぷりの濃いめの肉味噌をかければ、小料理屋さんのような逸品に仕上がります。
ホロっとやわらか「カレイの煮付け」

かれいは脂が乗っていて身離れがよく、骨が少ないので子どもでも食べやすい魚です。しいたけやごぼうなどの旨み成分の多い食材と煮ることで、出汁を使わなくてもおいしく仕上がります。
洋風煮込みにも挑戦!「春野菜のラタトゥユ」

野菜たちの力を借りて、鍋の中でじっくりと火を通すラタトゥイユ。にんにくや生姜などの香味野菜を使い、味付けは塩のみと至ってシンプル。ですが、いろいろな野菜の旨みが相まって滋味深い味わいが楽しめます。
夏にうれしいひんやり感「こうや豆腐の冷たい煮物」

食欲のない夏にぴったり!干ししいたけのだしをたっぷり吸ったこうや豆腐が主役の「冷たい煮物」です。だしが効いた和風ジュレと一緒に口に運べば、ひんやりとした感覚と、うま味が口の中いっぱいに広がります。
下準備をしっかりとすることで、大根はお箸がスッと通るくらいほろほろに、手羽先はお箸でも食べやすく手をほとんど使うことなく食べることができました。日中の空いている時間に大根の下準備をしておけば、夕食の準備時間がさらに短縮できてGOOD!さっそくわが家でも試してみようと思います。
(SATETO編集部 寺尾)
教えてくれたのは

- 料理教室「スマイルスマイズ」主宰
宮崎知花 - 大手料理教室で全国各地を転勤しながら13年勤務。福岡へ転勤後、第一子出産を機に自宅教室を開始。料理とパンが同時に学べる1回完結レッスンや、親子で一緒に料理が楽しめる親子レッスンなどを開催中です。
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