
レシピや料理本に出てくる、“ひたひた”“とろ火”などの「料理用語」。何となくの理解でも失敗することはないから、そのまま調べずにいる…という方も多いのではないでしょうか。でも、料理を作る上でやはり基本は大切!今まで問題なく作れていたとしても、料理用語を正しく理解することで、より見た目が美しく仕上がったり、味が染みておいしく仕上がったりするかもしれません。この機会に、調理用語を理解しましょう!

▲ 教えてくれるのは、2児の母でもある料理家の宮崎知花さん。子育てと仕事を両立させる中で生み出す時短レシピは、忙しいママの強い味方。
まずは料理の基本、「火加減」「水加減」「煮る」「焼く」の調理用語を解説します。
火加減
◎ 強火

火が鍋底全体に当たっている状態をいいます。IH調理器の温度設定では約200~230度です。野菜炒めのようにシャキッとした食感を残したい時や、煮汁を煮立てる時などに強火を使います。
◎ 中火

火の先が鍋底に少し触れる程度の火加減を指します。IH調理器の温度設定では約160~180度。煮汁がふつふつと煮立たっているような状態で、食材をやさしく加熱したり、じっくりと調理したりする時、フライパンを熱する時などに使用します。レシピに火加減がかかれていない場合は中火にしましょう。
◎ 弱火

鍋の底に火が当たっていない状態のこと。IH調理器の温度設定では約150度前の出力が目安となります。風味を損なわずに調理できるため、カレーやシチュー、肉じゃが、ポトフなどの煮込み料理に向いています。
◎ とろ火

弱火よりさらに弱い、最小の火加減のことです。IH調理器の温度設定では約140度以下。すぐに火が通る薄焼き卵や、逆に長時間かけてじっくり火を通す煮豆やおかゆなどを作る時に用います。料理の保温としてもちょうどいい火力です。
※IH調理器の場合は、温度調節の設定が各メーカーの商品によって異なるため、必ず取扱説明書を確認しましょう。
\火加減に関する豆知識/
茹でたり、煮たりするレシピの場合、強火のことを「ぐつぐつ」「ぐらぐら」「ごぼごぼ」と表現していることがあります。また、「ことこと煮る」は、食材を鍋の中でおどらせないよう、静かに煮る状態を指します。
水加減
◎ ひたひた

食材の表面がようやく水につかるか、少し頭が出ているくらいの水加減のこと。主に、かぼちゃやじゃがいもなど、煮崩れしやすいものを煮る時に用いられる水加減です。落としぶたをすることで対流が起こり、少ない水分でも調味料がまんべんなく染みわたります。さらに、煮立った時に鍋の中で材料同士がぶつからないので、煮崩れしにくくなります。
◎ かぶるくらい

食材の頭がちょうど水につかるくらいの水加減です。“ひたひた”よりは水の量は多くなります。根菜など、煮汁を残しながら、時間をかけて火を通したい時に使われる水加減。ゆで卵を作る時や、高野豆腐の煮物など、じっくり調味料を染み込ませたい時にも向いています。
◎ たっぷり

食材全体が完全に水につかり、さらに十分な水分量がある水加減のこと。“かぶるくらい”よりさらに30%程度水を足した量が目安です。お湯の温度を下げずに、短時間で茹でたい時や、ほうれん草などの葉野菜や麺類を茹でる時に使われる水加減です。
煮る

◎ ひと煮立ち
煮汁や汁物に追加で具材を入れて、一度温度が下がった時、再び沸騰させて短時間煮立たせることを指します。沸騰させる時間の目安は30秒ほど。味をなじませる、葉物などに火を通して色鮮やかにする効果があります。
◎ ひと煮
1〜2分程度、沸騰させない程度に少しだけ煮ることをいいます。例えば、みそ汁のみそを溶き入れた後や、最後の仕上げに卵を入れて、半熟状に仕上げる時などによく使われる言葉です。
◎ 煮立たせる
煮汁などを十分に熱して、表面がぼこぼこと泡立つくらい沸騰させることをいいます。一般的に、煮立つまでは中火〜強火、一度煮立ったら、調理に合わせた火加減に弱めることが多いです。同じような意味で「煮立てる」という言葉が使われることがあります。
◎ 煮詰める
煮物など、水分の多いものを加熱して、水分を蒸発させて飛ばすことをいいます。水分を減らすことで、味が凝縮されてしっかりとした味付けになり、とろみが出て食材と絡みやすくなります。煮物の仕上げやミートソース、ジャムなどを作るときには欠かせない行程です。
◎ 鍋止め
煮物を作る際に、煮上がった後もしばらく鍋に入れたままにしておくこと。そうすることで、中までじっくりと味を含ませることができます。大根やじゃがいもなどのように味が仕込みにくい食材を煮る時に、効果を発揮します。
焼く

◎ 炒る(煎る)
鍋などに食材を入れ、加熱して水分を飛ばしたり、豆やごまなどの乾燥した食材をカリッとさせる調理法。「炒る」と「煎る」に大きな差はありませんが、「煎る」にはより熱して焦がす、の意味合いが含まれることがあります。
◎ 炒り焼き
炒り焼き(いりやき)とは、たれをつけた肉や魚などを、水けがなくなるまで焼くこと。またその料理のことを指します。
◎ 乾煎り(空炒り)
鍋などに食材を入れて、水や油などを使わずに炒めること。こんにゃくやしらたきなどの余分な水分を除いたり、ごまや豆、煮干しなどに火を通し、香ばしくしたりする場合に用いる手法です。
まだまだある!よく使われる調理用語
レシピや料理本には、料理初心者には少し分かりにくい調理用語がたくさん出てきます。数ある中でも、よく使われる代表的な調理用語を解説します。
◎ 湯通し

食材を沸騰したお湯に入れて数秒から数十秒程度浸し、すぐに取り出すこと。「熱湯にさっとくぐらせる」と、肉、魚に関しては「霜降りにする」も同じ意味です。アクをとる、くさみを抜く、色鮮やかに仕上げるなど、食材によってさまざまな目的があります。
◎ ゆでこぼす
材料を鍋に入れて沸騰させて煮立てたのち、そのゆで汁を捨てるという食材の下処理方法のひとつです。アクや渋みなどを取り除くための工程で、ほうれん草、じゃがいも、こんにゃくなどに用います。煮汁の場合は「煮こぼす」ともいいます。
◎ こそぐ

包丁の背(峰)や刃の部分を使って、食材の表面をこすって薄くこすり落とすこと。魚の鱗や、ごぼうやしょうがの皮を落とす時によく使われる言葉です。
◎ 鍋肌

鍋の内側の側面のこと。主にフライパンや中華鍋に使う言葉で、調味料を入れる時に「鍋肌から回し入れる」などといった表現で使われます。料理に直接かけずに、鍋肌に沿って加えると、部分的に味が濃くなることがなく、また、鍋の別で調味料が加熱され、香ばしさが引き立ちます。
◎ 味を「ととのえる」
料理の最後に、調味料を加えて味付けを調整することをいいます。料理の味付けは、一度濃くしてしまうと薄くするのは難しいため、最初は薄味で調整しておき、最後に塩分(塩、しょうゆなど)、糖分(砂糖、みりんなど)、辛み成分(こしょう、とうがらし類など)などを加えて、味をみながら調整をします。味をととのえるときは、レシピの分量だけに頼らず、必ず自分の舌で味をみることが大切です。
さて、知っている調理用語はいくつありましたか?私はというと…自信を持って明確に誰かに説明することができる用語は2割程度でした…トホホ。ちょっとした言葉の違いで、意味がまったく異なるものもあり、改めてこうして知ることができて、本当によかったです。ぜひ、調理用語を覚えて、みんなで料理上手になりましょうね!
(SATETO編集部 寺尾)
教えてくれたのは

- 料理教室「スマイルスマイズ」主宰
宮崎知花 - 大手料理教室で13年間勤めた後、第2子出産をきっかけに自宅で料理教室を開始。料理とパンづくりを同時に学ぶことができる1回完結レッスンや、親子で一緒に料理が楽しめる親子レッスンなどを定期的に開催しています。
正しく計り、正しく切る!
初心者のための料理の基本マニュアル
調味料を正しく計量したり、包丁を上手に使ったりするだけで、味や仕上がりがぐっとよくなることも。基本をしっかり身につけて、料理上手を目指しましょう!
いまさら聞けない料理の基本。
正しい「はかり方」を覚えよう

大さじやカップの正しい使い方を学んだことがなく、自分流で計量している人が多いのではないでしょうか。料理をおいしく作るには、まず正確に計量することが大切。初めて作る場合はレシピ通りに、慣れたら自分好みにアレンジするのも料理の楽しさのひとつです。
料理時間をより楽しくする、包丁の使い方・扱い方

子どもの頃、家庭科で包丁の扱い方を習った覚えがある方も多いはず。正しい姿勢で手際よく食材を切ることで、料理の効率が上がり、美しく仕上げることができます。毎日使うものだからこそ、この機会に正しい使い方を見直してみませんか。
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