昔から「一汁一菜」といわれるように、食事の時には汁物(スープ)も一緒にいただくのは日常の光景ですよね。たまにはちょっと違う味付けにしたいものですが、マンネリ化しがち…。そんな時ぜひ試してみて欲しいのが“旨みのかけ算”です。「こんな食材もスープに合うの?」という意外な組み合わせで、日々の汁物に新しいおいしさと変化をプラスしてみませんか。
教えてくれるのは
料理家 SHIMAさん
「簡単、時短、節約、おしゃれ」をモットーにレシピを考案しているSHIMAさん。料理家の傍ら、撮影・映像編集もこなし、ブログやYouTubeでは解説付きのレシピを日々更新されています。
ちょっと加えるだけで、
いつもの汁物が味わい深く変身!
おいしさアップの
食材いろいろ
味噌汁、お吸い物、洋風スープなど、日々の汁物に変化をつけたいと思っても、なかなかピンとこないもの。そんな時にぜひ試してほしいのが、おいしさを深めてくれる“旨み成分”のいかけ算です。汁物のポテンシャルをグッと高めてくれる旨み成分とは何なのか?を、ご紹介したいと思います。
料理をおいしいと感じさせる代表的な旨み成分に、「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」があります。
これらの旨み成分はさまざまな食品に含まれており、組み合わせて摂取することで、症状効果により十数倍にも旨みが増すことがわかっています。
たんぱく質を構成する20種のアミノ酸のうちのひとつ。日本で最初に発見された旨み物質として調味料などに活用されています。
和食に欠かすことのできない昆布には、たっぷりのグルタミン酸が含まれています。主にだし用として使われているのは、真昆布、ラウス昆布、利尻昆布など。長昆布はおでんや煮物などに向いています。ワカメやあおさなどの海藻類は、お味噌汁との相性もぴったりです。
白菜やアスパラガス、ブロッコリーなどの野菜にもたくさんのグルタミン酸が含まれています。中でも特に旨みが強いのがトマト。イタリアやフランスでは「トマトなしではおいしい料理が作れない」といわれているほど旨み成分の宝庫として知られています。熟成するに従ってグルタミン酸が増加し、真っ赤に熟す頃にピークを迎えます。
牛乳や生クリーム、バター、チーズなど、グルタミン酸を多く含む乳製品は、汁物のおいしさをグンと高める食材のひとつ。味をまろやかに仕上げてくれる効果も。
主な成分はグルタミン酸とグアニル酸。それらが含まれる割合はきのこの種類によって異なるため、いくつかの種類を組み合わせて使うことで奥行きのある味わいが生まれます。
日本古来より親しまれている醤油や味噌などの発酵調味料は、グルタミン酸がたっぷり含まれています。スープにコクを与え、味に広がりを持たせてくれる、日本人にとって欠かせない調味料です。
核酸を構成する成分のひとつ。動物性の食材に多く含まれます。
イノシン酸の代表とも言えるのが豚肉や鶏肉などの肉類。スープの具材でもベーコンなどの豚肉と野菜の組み合わせをよく見かけるのは、旨みの相乗効果が発揮されるからだといえます。
魚の主な旨み成分はグルタミン酸とイノシン酸。イノシン酸は、魚が生きている時にはほとんどありませんが、死後硬直後10時間くらいでピークに達すると言われています。かつお節や煮干しの旨みもイノシン酸によるものです。
核酸の一種で、干し椎茸に代表される旨み成分。椎茸を干すことでグアニル酸が生まれ、さらに低温で水戻しすることでその量が増加することが分かっています。また、しめじなどのきのこ類を加熱したり冷凍することでもグアニル酸が生成されます。
「旨みの相乗効果」で
もっとおいしく
旨み成分が含まれた食材は、単独で使うよりも組み合わせることで旨みが飛躍的に強くなることが知られています。例えば日本料理では昆布(グルタミン酸)とかつお節(イノシン酸)、西洋料理や中国料理では野菜類(グルタミン酸)と肉類(イノシン酸)を組み合わせるなど、「旨みの相乗効果」は古くから世界各国の料理に取り入れらてきました。
SHIMAさん流
「グルタミン酸」×「イノシン酸」×「グアニル酸」
“旨みかけ算”でつくるおいしさアップの
汁物4選
豆乳が味のまとめ役!
洋風な味わいが斬新な
トマトとツナの豆乳味噌汁
思いもよらなかった食材の組み合わせで、いつもの味噌汁が洋風に変身。トマトやツナの旨みが溶け出すだけでなく、オニオンフライや粉チーズなどより味に深みが増す食材をトッピングすることで、コクのあるスープに仕上げました。
切干大根の戻し汁を
だし代わりに
切干大根ときのこの
ミルクスープ
切干大根の戻し汁を使った、味わい深いクリームスープです。サラダチキンを入れることで、醤油や塩などを使わずに、コク旨スープが完成します。切干大根の栄養も逃がすことなくいただけるのもうれしいですね。
具材のごろごろ感がうれしい
“おかずスープ”
白菜とカマンベールの
スープ
鼻孔をくすぐるにんにくの香りが食欲そそるスープです。すべての具材に旨み成分が含まれているので、まるで何時間もコトコトと煮込んだかのような一品に。豚肉の旨みがたっぷり染みた白菜にチーズが絡み、クセになること間違いなし!
お湯を注ぐだけだから
忙しい日の朝ごはんにも
梅干しととろろ昆布の
かんたん汁物
梅干しととろろ昆布のかんたん汁物の材料(1人分)
梅干し…1個
とろろ昆布…ひとつまみ
しらす…小さじ2
ネギ…適量
梅干しととろろ昆布のかんたん汁物の作り方
お椀に、材料を全て入れ、150mlのお湯を注いだら完成。
お好みでかつおぶしや桜えび、醤油を入れてもOK。
どの食材に何の旨み成分が含まれているかを何となくでも頭に入れておくと、誰でも簡単においしいスープをパパッと作ることができます。“少し味が物足りないな…”と感じたら、洋風スープならチーズやフライドオニオンを、和風スープならネギやのりなどをトッピングして風味をプラスするのもいいですね。
思い立ったらすぐに作れる手軽さと、美しい見た目を兼ね備えたスープがたくさん完成しました。しかも簡単な味付けなのに、しっかりコクを感じるスープばかり。その秘密は“旨み成分”だったということを知って、目からうろこです。“料理は科学だ”という言葉を聞いたことはありますが、“こういうことだったのか…”と腑に落ちました。これからは料理本に頼らず、頭の中でしっかり科学しながら、オリジナルのスープ作りを楽しみたいと思います。
(SATETO編集部 寺尾)