近年は地震だけではなく豪雨や台風、豪雪などの自然災害が多発し、各地で甚大な被害が発生しています。いざという時のために防災グッズを準備しようと思っても、何を準備すれば良いのか迷う方も多いのではないでしょうか。そこで今回は防災の専門家である防災士さんに、災害に備えて準備すべきものやベストな置き場所などを伺いました。
防災グッズをいざ準備しようと思っても、何から準備していいのかわからない…。そこで参考になるのが実際に経験された方の声。2016年の熊本地震を経験された生協くまもと職員にアンケートを実施しました。(2025年2月実施・回答19名)


防災士
小西亜季さん
整理収納アドバイザーや着付師として活動しながら、防災士の資格を取得。地元・広島で起きた豪雨災害では、被災者のサポートを経験。現在は小学校や地域にて防災教室などの活動を行う。


最も多かったのが車内や自宅で過ごしたという方。車内避難も念頭に置いた上で、防災グッズを準備しておくと安心かもしれません。


8割以上の方が、被災した当時は防災グッズを用意していなかったという結果に。


車の中に置いていた方が最多。車中泊ができるように電源を準備されていた方も。


水・スマホの充電器・懐中電灯は必須。現金は釣り銭が出ない時があるので、小銭で準備しておくといいようです。
・「事前に準備しておかないと、逃げるのに必死で何もできない可能性があります」
・「家族や知人と事前にシュミレーションしておくことが大切です」
・「いざという時、誰が何をするのか、何を持って逃げるのかなど、家族で役割を決めておくといいと思います」
アンケート結果から、被災された方のリアルな状況が伝わってきます。“備えあれば憂いなし”。他人事と思わずに、日頃の備えが必要ですね。

どんな災害にも対応できるよう、まずは「基本の備え」を整えることが大切です。では具体的にどんなものを準備すればいいのでしょうか。
災害が発生した場合、ライフラインが復旧するまでに、電気は3~7日間、 ガスと水道は数週間から数ヶ月かかるといわれています。電気よりもガスや水道の復旧が遅くなるのは、地中に埋まっているガス管や水道管が破損し、壊れた箇所の特定に時間がかかるから。そこで今回は1週間を目安に防災グッズをご紹介します。

1人1日3ℓを目安に飲料水を準備しておきましょう。ペットボトルのサイズは、保管するスペースに余裕があれば2ℓサイズ、なければ500㎖サイズでOK。500㎖は持ち運びしやすいというメリットがあるので持ち出し袋にいれても。
生活用水を確保するため、常にお風呂に残り湯を溜めている方もいるかもしれませんが、カビが発生しやすいので避けた方がいいでしょう。ただし、豪雨や台風など予想しやすい災害時には、緊急措置としてお風呂に水を溜めることは有効です。
アルファ米や缶詰、レトルト食品などの非常食を備えておくことも必要ですが、意外に見落としがちなのが、冷蔵庫の中の食品です。停電時でも冷蔵庫のドアを開閉しなければ数時間は冷気が保たれます。災害時は、まず冷蔵庫の中の食品から消費しましょう。そう考えると少し気が楽になりますよね。また、災害が長期化すると健康被害が懸念されるため、野菜もちゃんと摂取しておきたいところ。常温保存できる野菜ジュースを備蓄品に加えておくことをおすすめします。
懐中電灯(乾電池式・手回し式)や部屋全体を照らすLEDランタン、スマホ充電用のモバイルバッテリーを1〜2個準備しておきましょう。モバイルバッテリーは、電池で使えるタイプが便利です。電池は懐中電灯にも使えるので、多めにストックしておくことをおすすめします。また冬にはカイロやカセットガスストーブ。夏はクールタオルやハンディ扇風機などがあると安心です。
携帯トイレ(最低1人1日5回分以上)、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、 女性は生理用品、赤ちゃんのいる家庭はオムツの準備を。生理用品やオムツは、タオルやハンカチなどでも代用もできますが、使い心地がよいとは言えません。そのため、普段使っているものを多めに備蓄しておくことをおすすめします。また、災害時には通常のごみ収集が行えずごみを捨てられないことも。臭いを封じ込める防臭袋があると便利です。
絆創膏や消毒液、包帯、常備薬、ピンセット、ハサミ、薬、マスク、歯磨きシート、水なしシャンプーなどを準備しておきましょう。特に口内を清潔に保つことは健康維持にもつながります。糸ようじやデンタルフロスもあると安心です。
キャンプや車中泊のグッズはそのまま防災グッズとして活用できます。限られた食品や道具で調理したり、車の後部座席を宿泊スペースにしたり、キャンプをしながら家族で防災について学んでみてはいかがでしょうか。

どんな災害にも対応できるよう、まずは「基本の備え」を整えることが大切です。では具体的にどんなものを準備すればいいのでしょうか。


A. 新しく何かを購入するよりも、普段から使っているものを防災グッズと活用することをおすすめします。消費期限や使用期限が近いものから消費し、消費した分を買い足して一定の備蓄をしておく“ローリングストック”がベスト。飲料水や食品、衛生用品などは普段から多めにストックしておきましょう。


A. マンションでは、停電でエレベーターが使えなくなることがあります。特に高層マンションにお住まいの方は移動が大変になるので、在宅避難を前提にした備蓄を十分にしておきましょう。戸建ての方は、建物被害が発生して避難所を使う可能性が高いため、避難所でストレスを軽減できるような、アイマスクや耳栓などを準備しておくといいでしょう。


A. 断水時、水はとても貴重です。鍋やお皿は洗うことができないと思っておきましょう。そこで役立つのが、パッククッキングできる高密度ポリエチレン袋(ポリ袋)です。耐熱性のポリ袋を使うことで、鍋やお皿を汚さずに調理できます。
また生活必需品とは異なりますが、居場所を知らせるホイッスル、そして家族写真は、行方不明時の捜索や避難所での心の支えになります。


赤ちゃんがいる家庭
粉ミルク、哺乳瓶、オムツ、ベビーフードなど。最近は紙パック式の液体ミルクも販売されています。お子さんの心を落ち着かせるアイテムとして、好きな絵本やおもちゃなどを準備しておくといいでしょう。
高齢者がいる家庭
常備薬や眼鏡(老眼鏡)、補聴器などをいつでも持ち出せるようにしておきましょう。避難所では、床に座ったり横になったりするシーンが多いため、クッションやマットがあれば安心。避難所に準備されていることもあります。
ペットがいる家庭
1週間分のペットフードと飲み水、ゲージを基本に、トイレ用のペットシーツや新聞紙、猫砂を余分に準備しておきましょう。万が一、ペットとはぐれてしまった場合に備えて、首輪には迷子札を付けたり、マイクロチップを装着しておくと安心です。
赤ちゃんやペットがいる場合、周りの目が気になるかもしれません。別のスペースを準備している避難所もあるようですが、実際に利用するのは難しい場合もあります。できるだけ在宅避難できるよう、住まいの耐震診断を行い、耐震補強を行っておきましょう。また家族の人数や形態により、備蓄する量が異なってきます。自分に合った備蓄を知りたい方は、こちらのサイトを参考にしてみてください。
[東京備蓄ナビ] https://www.bichiku.metro.tokyo.lg.jp/



防災グッズの置き場所をしっかりと決め、どこに何があるかを家族全員が把握しておけば、緊急時にもスムーズに必要なものを取り出せます。どこにどんなものを置いておけばいいのでしょうか。
玄関
玄関には、非常食や防災用品を入れた避難用リュックと運動靴を置きましょう。避難用リュックは、持ち運びしやすいよう6㎏以内がおすすめです。
寝室・リビング
懐中電灯とスマホのモバイルバッテリーは充電しておき、リビングや枕元に常備。ベッド周りに防災スリッパや眼鏡を置いておくと安心です。
キッチン
棚の奥ではなく、すぐに取り出せる位置に食料(非常食)を保管しておきましょう。缶切りやカセットコンロ、ガスボンベ(10本くらいあると安心)も一緒に保管を。地震で家具などが倒れて、食料が取り出せなくなることもあるので、家具の転倒防止を万全にしておきましょう。
車の中
避難用リュックに入りきれない、もっとあってもいいものを置いておくと安心です。モバイルバッテリーや毛布、レインコート、靴、防寒具をトランクに収納しておきましょう。ガソリンを常に満タンにしておくように心がけておくと安心です。


色々なところで防災グッズは購入できますが、コープのカタログでも利用の多い防災グッズをご紹介します。


CO・OP商品の中から、調理が簡単なものやそのまま
食べられるもの、あると便利な消耗品などを、実際に東
日本大震災を経験した組合員さんのご意見を参考にしな
がら選定し、詰め合せました。3日分(2人前)を目安に
しています。
※企画回によって商品内容は変更になることがございま
す。あらかじめご了承ください。
CO・OP商品の中から、調理が簡単なものやそのまま食べられるもの、あると便利な消耗品などを、実際に東日本大震災を経験した組合員さんのご意見を参考にしながら選定し、詰め合せました。3日分(2人前)を目安にしています。
※企画回によって商品内容は変更になることがございます。あらかじめご了承ください。


ダンボール製の便器に汚物袋と凝固剤をセットするだけ
の簡易トイレ。凝固剤1袋分(約9g)で約1,000cc
(約2〜3回分)の水分を固めます。
ダンボール製の便器に汚物袋と凝固剤をセットするだけの簡易トイレ。凝固剤1袋分(約9g)で約1,000cc(約2〜3回分)の水分を固めます。


普段は普通のスリッパとして、災害時には足を守る防災
スリッパに。釘を通さない特殊シートを底面に内蔵し、
飛び散ったガラス片の上も安心して歩けます。
普段は普通のスリッパとして、災害時には足を守る防災スリッパに。釘を通さない特殊シートを底面に内蔵し、飛び散ったガラス片の上も安心して歩けます。


単1形〜単4形の電池がどれか1本あれば使用できるL
LEDライト。使わない機器から1本取り出せばすぐに
使えます。
単1形〜単4形の電池がどれか1本あれば使用できるLEDライト。使わない機器から1本取り出せばすぐに使えます。


ソーラー充電、USB充電、手回し充電、サイレン、
LEDライト、AM/FMラジオの6つの機能が1台に
なった、万能防災対応ラジオ。
ソーラー充電、USB充電、手回し充電、サイレン、LEDライト、AM/FMラジオの6つの機能が1台になった、万能防災対応ラジオ。


熱を逃しにくい非常用寝袋。防風・防水機能に加え、保
湿効果もあります。コンパクトに収納できるので、持ち
運びにも便利です。
熱を逃しにくい非常用寝袋。防風・防水機能に加え、保湿効果もあります。コンパクトに収納できるので、持ち運びにも便利です。


消火器の使い方や、ガスメーターの復帰方法、紙食器の
作り方、水を使わない歯の磨き方など、防災に役立つ知
識をゲームで学べます。
消火器の使い方や、ガスメーターの復帰方法、紙食器の作り方、水を使わない歯の磨き方など、防災に役立つ知識をゲームで学べます。


防災グッズは 「準備したら終わり」ではなく、
定期的に見直しが必要です
賞味期限が切れていないか、懐中電灯が正常に作動するかを、防災の日など、日にちを決めて、年に1回は防災グッズの見直しをしましょう。また、普段から家族で避難場所や安否確認の連絡方法について話し合うことも大切です。お子さんから学校で教わった防災訓練について話してもらうのもいいでしょう。アプリや掲示板など災害情報を収集する手段を整えておき、地域のハザードマップを確認しておくことも忘れずに。そして近隣の方々と、いざという時に助け合える関係性を築いておきましょう。日頃から挨拶をするなどの心がけが、もしもの時の安心につながります。
国土交通省 防災ポータル
防災に関する基礎知識や最新情報、ハザードマップなど。
内閣府 防災情報
防災に関する総合的な情報や、災害時に役立つアプリ。
防災グッズを準備するとなると、水や非常食、防災用品をひと通り購入しないといけないから大変と思いきや、普段から使っているものが防災時にも役立つとは! これからはいつものものを多めに準備して、いざという時に備えたいと思います。
(SATETO編集部 山本)
自然災害はいつどこで遭遇するか、誰にもわかりません。日常の延長として、普段使いのものを中心に今日から取り組むことができる防災アイディアをご紹介しています。


みなさんから寄せられた防災アイディアをピックアップ。専門家によるアドバイスもお届けしています。今日からすぐ実践できるものもありますので、ぜひ参考にされてください。


被災された方々に伺った体験談の中で圧倒的に多かったのが「アウトドアの経験がすごく役に立った」という声。そこで実践していただきたいのが、公園や広場などに防災グッズを持って出かける“防災ピクニック”です。避難場所まで歩いてみる、非常食を食べてみる、携帯ラジオを聞いてみるなど、毎回ちょっとずつでいいので予行練習をしながら、その家庭なりの防災を見つけていきましょう。


災害でライフラインが寸断された時でも、温かい食事ができればそれだけで気持ちが安らぎます。そんな’もしも’の時に役立つのが、エコな防災レシピ「ポリ袋調理」。基本のポリ袋炊飯、缶詰を使った炊き込みご飯やパスタのレシピをご紹介しています。