防災対策といわれて何を思い浮かべますか?「どこから手をつけたらいいかわからない」と 途方に暮れてしまったり、「家族の命を守らなくては」という責任感から備えのハードルを高くしてしまっている方も多いのではないでしょうか。自然災害はいつどこで遭遇するか、誰にもわかりません。日常の延長として、普段使いのものを中心に今日から取り組むことができる防災対策をご紹介いたします。
NPO法人ママプラグ理事 アクティブ防災事業代表
冨川万美さん
東日本大震災後に被災母子支援を行ったことをきっかけに、防災事業を中心とした『NPO法人ママプラグ』を設立。『全災害対応! 子連れ防災BOOK』(祥伝社)・『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』(Gakken)などの多数の防災に関する本の出版に携わる。自ら考えて動く「アクティブ防災」を提唱し、全国で防災講座を展開するほか、「防災ピクニック」を広める活動に尽力している。
NPO法人ママプラグ理事 アクティブ防災事業代表
冨川万美さん
東日本大震災後に被災母子支援を行ったことをきっかけに、防災事業を中心とした『NPO法人ママプラグ』を設立。『全災害対応! 子連れ防災BOOK』(祥伝社)・『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』(Gakken)など多数の防災に関する本の出版に携わる。自ら考えて動く「アクティブ防災」を提唱し、全国で防災講座を展開するほか、「防災ピクニック」を広める活動に尽力している。
SATETOの姉妹サイト「TSUKURO」に寄せられた、
防災についての疑問・質問を、冨川さんに聞いてみました。
避難時に持ち出すための“非常用持ち出し袋”に入れるものと、家の中に備蓄しておくものを用意することからはじめてみるといいと思います。
非常用持ち出し袋は、家族の人数分用意するのが理想ですが、保管場所も限られているので家族が多い場合は大変です。何も用意してない方は、「まず1個」からでもいいので用意してみましょう。実際に避難を経験された方から「いざ避難しようとした時に、リュックが重くて持てなかった」という声も多く上がっているので、「持てる重さ」を基準にして、必要なものを取捨選択していくといいでしょう。
また、家の中に備蓄しておくものは、まずはトイレットペーパーなどの日用品や、水、食べ物のストックを切らさないところからはじめてみましょう。“ゼロ”よりは“0.1”でもいいので用意しておくことが大切です。
災害にもよりますが、豪雨や台風などの場合は避難所に行ったとしても1〜2日ほどの滞在になることがほとんど。必要なのは「食べ物と水」ですが、最悪の場合でも水さえあれば大人はどうにか我慢できます。小さな子どもや高齢者などお世話が必要な家族がいる場合は、おむつや常備薬などを必ず入れておくようにしましょう。
家族に必要なものを見極める方法として、起床から就寝までの1日のスケジュールや、自分が習慣にしているものを書き出してみるのがおすすめです。「スマホは絶対に必要」「食後に必ずコーヒーを飲んでいる」など、様々な気付きがあると思います。習慣にしていることは、1日欠かしてしまっただけでもストレスに感じてしまいます。
また、赤ちゃんがいる場合は、抱っこをして避難しなければならず、重い荷物を持っての移動が困難です。そうした場合はママバッグがそのまま非常用持ち出し袋になりますので、普段から中身を確認し、使ったものはすぐに補充するようにしましょう。
間取りや構造にもよりますが、どんな家にも共通していえるのが、キッチンやリビングなど、「ものが多い」「倒壊などの危険がある」場所には置かないということ。
非常用持ち出し袋に関しては、避難経路に近い場所に置くようにしましょう。玄関、もしくは勝手口などがベストかと思います。備蓄品に関しては、例えば地震の場合、揺れが収まった後に取りにいけるような場所ならどこでも大丈夫です。家族全員で場所を共有しておくようにしましょう。
「年に1回は必ず見直さなければ」と考えると面倒になってしまうので、まずは非常食についての考え方を改めるようにしましょう。これまでは「5年、10年持つ食べ物=非常食」とされていたので、食べる機会がないまま賞味期限が切れてしまったという事例が多かったんです。なぜ食べないのか…それは、率直に「食べたくない」からだと思います。
いわゆる「非常食」ではなく、賞味期限が1〜3年あるような、フリーズドライのみそ汁やドライフルーツ、カレーのレトルトパウチ、缶詰、野菜ジュースなどの、調理不要ですぐに食べられるものを常に欠かさないようにするという方法がベストだと思います。食べたらまた買い足す、その繰り返しによる備蓄方法を「ローリングストック」といいますが、家族の好みに合わせられますし、生活の延長で行うことができるのでおすすめです。
家の片付けは最大の防災対策です。睡眠時間も合わせると、一番長い時間を過ごすのが家の中。つまり、一番災害に遭う可能性が高いのも家ということ。まず自宅が安全な場所になるよう、倒れそうなもの、散乱しそうなものを減らすようにしてみましょう。 「小さな子どもがいて、整理整頓なんて無理」と思われるかもしれませんが、無駄なものを整理し、あるべき場所に必要なものを備えていくだけで、防災力は格段にアップします。また、寝室や和室など、どこかひと部屋だけでもものを置かない部屋を作っておくと、そこが家の中での避難所になります。 子どもと一緒に“お片付けごっこ”をしながら懐中電灯など災害時に役立つものの位置を確認し合い、イベント感覚で行うのもいいですね。
家の中が安全であれば無理に避難する必要はありません。しかし、豪雨による川の氾濫、地震による家の倒壊など、命の危険度が高い場合は「新型コロナウイルスが心配だから避難しない」という選択は絶対にやめてください。避難の際には、消毒用アルコールや、マスクを必ず持っていくようにしましょう。災害時に品薄になりやすいものでもあるので、日頃から意識して備蓄しておくようにしましょう。
冨川さんの取材を終えて、我が家の防災セットを確認したところ、クローゼットの奥の奥で見つかりました(反省…)。中からは、賞味期限が切れた水や乾パンが…。子どもが産まれて家族構成も変わったので、今必要なものを今一度確認し、防災セットを見直したいと思います。次回は、みなさんからいただいた防災アイディアをご紹介します。
(SATETO編集部 寺尾)