いろいろな場所で梅の実を見かける今日この頃。梅干しや、梅酒、梅シロップなどで一年中楽しむことができる梅は、昔も今も私たちの食卓に欠かせない食材です。桃のような甘くフレッシュな香りに包まれていると「梅仕事っていいなぁ〜。今年こそやってみようかな」となんだかワクワクしてきます。
そんな折、SATETOでもたびたび登場してくださる料理家・中山百代さんが、飲食店やご家庭でも使っている梅干しを毎年漬けていると聞きつけ、編集部で教わりに行きました。梅仕事って面倒そう……というイメージがあったものの「一度作ればずっと保存できるし、色んな料理に使えるし、何と言っても梅と塩と赤しそさえあればできるよ」というももさんの言葉に後押しされた編集部員。その初めての梅仕事をレポートします!
加工には、大粒で肉厚な南高梅や、果肉がしっかりとした白加賀梅などが適していると言われますが、梅干しを漬けるのに決まった品種はありません。市販のものなど、手に入りやすいものを使いましょう。
梅にはまだ青くて固いものから、熟した黄色い梅まであり、その熟度によって使い道は様々なんですよ。
なるほど、梅干しには熟した黄色い梅が適しているのですね! ということで、熟した梅をまずは用意するところから。
1.黄色く熟した梅を用意
いわゆる「完熟梅」と呼ばれる、黄色くて桃のような香りになった梅を用意します。青梅を買ってきた場合は、数日間常温で追熟させるのが良いそう。
▲ 今回は、ももさんのご近所の梅の木からいただいたものを使用しました。
2.容器や重石を準備
漬ける容器、重石、落し蓋、塩、そして計りを準備します。梅干しを漬ける容器は、プラスチックや金属など酸に弱い素材は避けて、ホーロー、ガラス、陶器などが適しているそうです。漬ける梅に対して2〜3倍の大きさの漬け瓶を目安にしましょう(梅1Kgを漬ける場合は、2〜3リットルの容器がベスト)。容器はあらかじめきれいに洗って乾かしておくことも忘れずに。
▲ 編集部からは4人が参加しましたが、選んだ容器の形もサイズも様々!容器選びも何気に楽しい時間です。
3.ヘタを取る
つまようじや竹串で、梅のヘタを取り除きます。この時、傷が入っている梅や傷んでいるものは取り除きます(傷んだ梅はジャムなどにすると良いそうですよ)。
▲ ヘタはポロリと簡単に取れるので、子どもたちも進んでやりたがる梅仕事だそうです。
4.洗って汚れを取る
梅についた汚れを水で洗いながら落としていきます。洗い終わったらざるなどに上げて水を切ります。
▲ 毎年大量の梅を漬けるももさんは、大きなタライで梅をジャブジャブ洗います。
5.梅を塩に漬ける
ももさんは、梅の重量に対して15%の塩を使います。一般的な梅干しより少しだけ減塩です。とはいえ、初心者でも問題なくできるそう。まずはきれいな布で梅を拭き上げ、容器の底に薄く塩を敷き、その上に梅→塩→梅の順で交互に入れていきます。
▲ 使う塩は、粒子が粗く梅にからみやすい粗塩がおすすめ。早く塩が溶けて梅酢が出やすいので、カビが生えにくくなります。精製塩でもできますが、サラサラで容器の下に塩がたまってしまいがちなので注意が必要だそう。
6.重石をして、数日間寝かせる
残りの塩を上から振りかけたら、落し蓋をして、重石をのせます。重さは、梅の重量の2倍くらいが目安。蓋つきの瓶などの場合は、塩の入った袋などを重石の代わりにのせ、蓋を閉めて圧をかけると良いそうです。
▲ ちなみにももさんが使用しているのは、ちょっとめずらしい陶器の重石。「自然の素材同士のほうが、味が馴染むような気がして(笑)」だそう。なるほど!
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冷暗所などで数日間寝かせることで、梅酢が少しずつ出てきます。
5日〜1週間ほど置いて、梅全体が酢に浸かるまで待ちましょう。
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7.赤しそを漬ける
塩が溶けて出てきた液(梅酢)に梅全体が浸かったら、赤しそを漬け込むサイン。ここでようやく梅干しらしい鮮やかな“赤”が生まれるのですね。まずは赤しその葉だけをちぎってよく洗い、ざるにあげて水気を切っておきます。しその重量は梅に対して少なくとも10%。しっかりと色と風味をつけたい場合は20%くらいが目安。
▲ 「今年はちょっとしそが少なそうやねえ」とももさん。ご自分の畑で採れた赤しそを使うため収穫量にバラツキがあるのも、ももさんの梅仕事ならでは。
- はじめに、赤しその重量に対して約15〜20%の塩を準備。
- ボウルに赤しそを入れて半量の塩を振り入れ、しばらく手で揉む。
- アクが出てきたら、赤しそをぎゅっと絞ってアクを含んだ汁を捨てる。
- 残りの塩を振り入れて同じように揉んで絞り、アクを捨てる。
- 固く絞った赤しそを、手でほぐしながら梅の中へ。この時、梅をいった
ん容器から取り出し、梅全体にしそが絡むように梅としそを交互に漬け
ていく。全体をゆするように馴染ませたら、再び重石をして寝かせる。
はじめに、赤しその重量に対して約15〜20%の塩を準備。
ボウルに赤しそを入れて半量の塩を振り入れ、しばらく手で揉む。
アクが出てきたら、赤しそをぎゅっと絞ってアクを含んだ汁を捨てる。
残りの塩を振り入れて同じように揉んで絞り、アクを捨てる。
固く絞った赤しそを、手でほぐしながら梅の中へ。この時、梅をいったん容器から取り出し、梅全体にしそが絡むように梅としそを交互に漬けていく。全体をゆするように馴染ませたら、再び重石をして寝かせる。
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冷暗所に置いて、梅雨が明けるのを気長に待ちましょう……。
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8.梅を干す
梅雨が明けたら、ようやく梅を干します! 8〜10月、晴れが続く日を見計らったら、梅の水気を切りながら平たいざるなどに並べていきます。ももさんとこの娘さんは、
こんなのや、
こんなのまで!
遊びゴコロあふれる楽しい干し方をひと通り満喫。
三日三晩、日中は日当たりの良いところで干して、夜は軒下や室内に取り込みます。梅全体を日に当てるため、途中で一度裏返してあげましょう。
9.保存容器にうつして完成
いい感じに水分が抜け、しわが出てきました! 表面にはうっすらと塩の結晶が浮かび上がっています。これで梅干しは出来上がり。保存容器にうつします。
この時、漬けておいた梅酢に戻す方法と、戻さずにこのまま保存する方法があります。梅酢に戻すと、酸味が強くみずみずしい食感の梅干しになるようです。戻さない梅干しは、酸味がまろやかでねっとりとした食感に。
「こればかりは好み」と言うももさんは、梅酢に戻さずにそのまま保存します。「赤しそが少ないかな」というももさんの言葉通り、淡く優しい赤みの梅干しが完成しました! 保存容器は、熱湯や焼酎などで必ず消毒しておきましょう。
▲ ご飯のお供だけじゃなくて、和え物など色々な使い道がある梅干し。ももさんは、スープや炒め物などの隠し味にも使っています。
残った赤梅酢は、根菜類を漬けてピクルス液にしたり、はちみつと炭酸水で割ってソーダにしたりと、鮮やかさが際立つので色々な料理に再利用するのもおすすめ。赤しそは、天日干しして乾燥させ、すり鉢で細かく砕いてゆかりふりかけにするのもいいですね。
▲ ももさんのお店で「干し赤しそ」が販売されているのも、この時期だけ。
梅仕事を終えて
「梅仕事」に憧れはするものの、手間がかかりそうなイメージもあって、これまでなかなか挑戦することはありませんでした。いざやってみると「梅と塩と赤しそがあればできる」というももさんの言葉通り、その工程はとてもシンプル。梅雨が明けるまでじっくりと時間をかけ、梅と会話をするように、あるいは子どもを育てるように仕上げていく感覚は、やっぱり季節の手仕事だなあと思わずにはいられないものがありました。本当に「梅雨」とはよく言ったものです。
ちなみに肝心のお味は……しっかりと塩が効いていて、しその香りも十分に味わうことのできる、すばらしい梅干しに仕上がっていました!雨の時期ならではの手仕事。みなさんもぜひ試してみてください。
(SATETO編集部 堀尾)